たけし作品を観た時の最初の印象は、(この人ただのすけべじじいじゃないんだ)だった。だが、私が成長し、彼のことが理解っていくたびに彼の奥深さが見えてきた。『テレビは日本人をかなりダメにしたと思うね。でも大衆をダメにするものしか、多分儲からないんだ。』彼はわざと浅薄な人だったのだ。そして実は、映画には彼の実態の片鱗がにじみ出ていた。ただの浅薄な人間では到底描けない世界を描いていたからだ。
彼は『命』というより『死』をテーマにすることが多く、それは突然やってくるはずだと考えていた。そのメッセージはそのまま啓蒙となり、また、だからこそ『命』が輝いて見えるという『哀愁』を教えてくれた。哀愁は、直接こちらに働きかけるというよりは、『後に残る』ものだ。