ポスター画像出典:『ヤフー映画』
『アイロボット』という映画とこれが同じ作品だと思い込んでいて、観ていなかった。実際には全然違う作品で、かつスピルバーグ作品という見逃せない要素だった。元々はキューブリックの企画で、スピルバーグが監督を任された経緯があるらしいが、一度断り、彼が死去し、死後にスピルバーグがメガホンを取ることを決意した流れだ。つまり、キューブリックとスピルバーグのほぼ合作みたいな映画なのだ。
ホラーのような緊張感と、宗教のような教訓性、役者の使い方に世界観、これはとても深遠な映画だった。だから、アメリカでは興行的に失敗したらしい。なぜならアメリカでは難解な哲学映画としてマーケティングされたからだ。だが、日本は成功した。日本では「母とロボットの愛」として宣伝されたからだ。
『眠たい時には哲学を読め』というが、世界中どこに目を向けても、難解な話は敬遠されるものである。『楽、得、安全』に支配されているのが人間というものだ。そんな中、『母と子の愛』という普遍的なテーマは、『安全』と『安心』を与える。日本ではジブリ映画が人気のトップを占めるが、あの映画の根幹にあるのもそうしたテーマが多い。『だからヒットしている(多くの人に訴求出来、多くの人の心を動かすことができ、多くの売り上げを上げることができている』のである。
とにかく、観るべき映画というものはこういう映画だ。教訓性とエンタメ性が強く、まるで『確かに存在するもう一つの世界線』を見て自分たちの現在の人生を俯瞰視できるような、『資料』とも『アトラクション』とも言える、名作である。