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『天国と地獄』 レビュー(感想)と考察

『天国と地獄』

 

 
 
「当時の誘拐罪に対する刑の軽さ」に対する憤りがこの映画を黒澤明が作った一つの理由だという。三船敏郎が『ワイルドな侍』の役ではなく、その逆で、洗練された東京のビジネスマンの役だから、最初は違和感がある。

 

私は冒頭のその狙いを全く知らずにこの映画を観たのだが、意外と観ていくと緊張感やリアリティが『よくあるドラマ』のそれとは違って、卓越していることに気づく。事実、舞台となった横浜の黄金町は、1950年~1960年代当時、今では考えられないような荒んだ環境だったらしい。

 

wikipediaにはこうある。

戦後の黄金町はヒロポンやヘロインといった麻薬密売の温床でもあった。特に昭和20年代は、大岡川を境界に密売組織による縄張り争いが頻発した。警察官の巡回すら身の危険を感じて出来ない程荒んだ環境であったという。

 

このような現実の『地獄絵図』が、まさにこの映画の階層を深くしている。マルクスが1800年代に言った発言にも関係していて、色々と考えさせられる映画になっている。事実、この映画の影響で誘拐事件が多発。国会でも取り上げられる社会問題となった。

 

 

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