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『怪物はささやく』 レビュー(感想)と考察

『怪物はささやく』

ポスター画像出典:『映画『怪物はささやく』公式サイト

 

 
 
監督はフアン・アントニオ・バヨナ。原作は英国史上初のカーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞のW受賞を果たしたパトリック・ネスの『怪物はささやく』であり、映画の脚本もネスが担当した。大人はまったく受け入れられないが、子供には刺さるかもしれない。子供というのはある種、『魔法のバリア』の中で生きている。親が『あなたたちは知らなくていいのよ』と子供に言うことは多々ある。

 

事実、食事を作らなくていいし、衣食住が揃っていることが当たり前ではないことを知らなくてもいいし、学校にいけるのが当たり前だと思っていていい。黙って生きているだけで、そのすべてを手に入れられたり、経験できると思っている。お金の事情も知らない。夫婦の事情も知らない。先祖が命を繋いできたからこそ自分の命があり得るが、想像力がないので他人のことよりも自分の指のささくれの痛みの方が気になってしまい、とにかく自分本位になりがちである。

 

 

三島由紀夫がこう言うようにまだ『狭い』のだ。したがって、不思議な現象に陥りやすい特徴がある。その時代の友人たちとの会話を思い出しても、霊的な現象とか、不思議な現象を信じていたりする。たとえば、『小さいおじさんを見た』とか、そういうことを真顔で言っているのだ。

 

金縛りは、大人になればそのからくりの原因がわかる。だが、分からない時期にそうした現象に直面した時、自分での処理の仕方は稚拙になる。お化けを本気で信じていれば、お化けの仕業だと思うかもしれない。その辺りは『ヴィレッジ』という映画を観ると面白いかもしれない。それを思い出す必要がある。こんな映画と揶揄することは簡単だが、この映画を理解するために、孤島にいたあの頃を、思い出すのだ。