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『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』 レビュー(感想)と考察

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』

ポスター画像出典:『ヤフー映画

 

 
 
1998年のイギリス・アメリカのクライムアクション映画である。イギリスでは、その年の年間興行成績1位を記録したというが、私はこれが何かのランキングで1位に来るような作品には見えなかった。さすが、ロックが生まれた国だということだろう。日本の根幹には現代の京都の町で見られるような『わびさび』がある。その意味だが、「侘び」とはつつましく、質素なものにこそ趣があると感じる心のこと。「寂び」とは時間の経過によって表れる美しさを指す。

 

まさに、ロックンロールとは真逆の美学であり、概念だ。静かな庭園で鹿威し(竹でできた水のやつ)の竹の音がコンっと小さく響き、池の水面にわずかな水紋が動くのをふと気づくような静寂の世界で、ゆっくりと温かいお茶を飲んで心を温め、風情を感じ、自然と一体化して世界の真理に触れる。これが日本の一つの美意識だ。

 

だがイギリスで生まれたロックンロールは、SEX、ドラッグ、ヴァイオレンス。シド・ヴィシャスは、

 

と言い、一切の枠をぶち壊す。既存の秩序を破壊することこそロックンロールだと言わんばかりに、建設的とは程遠い、刹那的な人生を謳歌しようとする。ロックに傾倒する人の中には、27歳で死ぬ伝説のロッカーが多いことから、自分の人生の寿命は予め27歳と決め、その年で自殺しようとする人もいるくらいだ。

 

日本の美学もイギリスのロックも、語るには私では知識が浅いが、何となくこのようなイメージを持った時、この映画が日本で1位にならない理由が見えてくるかもしれない。