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『キック・オーバー』 レビュー(感想)と考察

『キック・オーバー』

 

 

この映画で、混沌としたメキシコの極悪刑務所が映し出されるが、まるで実話かのように見えてしまうリアリティがある。恐らくすべてセットで作っているのだろうが、メルギブソンの名演技も相まって、本当にここに彼が収監されているように見える不思議な説得力がある。

 

今調べて観ると、舞台となるこの刑務所「エル・プエブリート」のモデルは1956年にメキシコ・ティファナに建設された刑務所で、本当にあったものだという。妙にリアルだったのはそのせいだったわけだ。わずか90分しかないB級気味の映画だが、B級ではない。短いからこそ展開のテンポがよく、無駄がない。

 

そして、最も注目すべきなのは最後の海辺でのシーンだ。メルギブソンが鑑賞者に語り掛けるセリフが、他と一線を画している。痒い所に手が届くとはこのことだ。このセリフによってこの映画の価値が引き上げられている。