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『オリバー・ストーン オン プーチン』 レビュー(感想)と考察

『オリバー・ストーン オン プーチン』

ポスター画像出典:『Amazon

 

 

映画監督オリバー・ストーンが2015年7月から2017年2月にわたってロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンにインタビューした内容を元に構成されたドキュメンタリーで書籍化もされている。それだけ貴重な内容だ。

 

だが、2022年にロシアがウクライナに侵攻したことで『貴重』という言葉もどこか穿って見えてしまう。ただ、それはそれで『その意向』があったという過去の資料として貴重なのは事実だ。

 

思い返すと常に彼が何かを含んだような発言をしていた。元々、ロシアと中国がアメリカ一強の時代にメスを入れようとする、ということは歴史の専門書でも言われていたことだった。世界史、日本史にて何度も見てきたが、世界初の帝国が誕生したアッシリアの時代から、現代にかけての世界の覇権の推移を見てみよう。

 

ヨーロッパの覇権の推移

STEP.1
アッシリア
紀元前7世紀の前半~紀元前609年。オリエントの統一王朝を成し遂げるが、アッシュル・バニパルの残虐性のせいで帝国が破綻する。
STEP.2
アケメネス朝ペルシャ
紀元前525年~紀元前330年。キュロス、カンビュセス2世、ダレイオス1世また統一し直し、インド北西部からギリシャの北東にまで勢力を伸ばす。
STEP.3
アルゲアス朝マケドニア王国
紀元前330~紀元前148年。フィリッポス2世がギリシャを、アレクサンドロスがペルシャを制圧。
STEP.4
ローマ帝国
紀元前27年~1453年5月29日(完全な崩壊)。カエサルが攻め、アウグストゥスが守る形で『ローマ帝国』が成立。
STEP.5
モンゴル帝国
1200~1300年。チンギス・ハンが大モンゴルの皇帝となり、5代目フビライ・ハンの時にはアレクサンドロスよりも領土を拡大。
STEP.6
オスマン帝国
1453年5月29日~。かつてのローマ帝国は、『神聖ローマ帝国』と『ビザンツ帝国』の東西分裂をしていて弱体化していた。1453年5月29日、メフメト2世がビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを征服。
STEP.7
スペイン帝国
1571年、スペインは『レパントの海戦』であのビザンツ帝国を滅ぼしたオスマン帝国を破り、地中海の制海権を奪取(正確にはまだオスマン帝国に制海権があった)。更に、『ポルトガルの併合(1580年)』で『スペイン帝国』は最盛期を迎える。
STEP.8
オランダ
1588年、『オランダ独立戦争』、『アルマダの海戦』に勝ったオランダは、急速な経済成長を遂げ、アムステルダムは世界の貿易・金融の中心地となり、スペインに代わって世界貿易をリードする『栄光の17世紀』を迎える。
STEP.9
イギリス
1677年、1651年から続いた『英蘭戦争』の結果、覇権がオランダからイギリスに渡る。

 

そしてこの後だ。規模もヨーロッパから『世界』へと変え、まとめ方は『世界で強い勢力を持った国』とする。

 

17世紀のイギリス以降世界で強い勢力を持った国

STEP.1
フランス
1800年前後。ナポレオンがヨーロッパで暴れまわるが、イギリス・オランダ・プロイセンの連合軍に敗れ退位。
STEP.2
イギリス
1830~1900年頃。ヴィクトリア女王の時代に『大英帝国』黄金期を迎える(パクス・ブリタニカ)。
STEP.3
ドイツ帝国
1870年頃~1918年。ドイツ帝国率いる『三国同盟』とロシア率いる『三国協商』の『第一次世界大戦』が勃発。
STEP.4
三国協商
1918~1938年頃。ナチス・ドイツが現れる前はまだこの連合国が力を持っていた。
STEP.5
連合軍
1945年~。特にアメリカ・ソ連。『第二次世界大戦』に勝った連合国は、引き続き国際的な力を保持。
STEP.6
アメリカ
1990年頃~。ソ連が崩壊し、アメリカ一強(パクス・アメリカーナ)の時代へ。

 

アッシリアからはじまり、ペルシャ、アレキサンダー大王のマケドニア、ローマ、モンゴル帝国と、この世界を『支配』する人が後を絶たなかった。この映画でも

 

  1. クリミア併合
  2. シリア空爆
  3. ウクライナ問題
  4. アメリカサイバーテロ

 

に関して言及するプーチンの姿を見ることができる。

 

こうなった以上ロシア側に何も正義などないというのは世界中の誰もが思うことだ。今回のウクライナ侵攻で、罪のないウクライナ人に、特に子供や女性に、取り返しのつかないことをしたことが連日ニュースで流れたが、もうそれをしてしまえばどんな理由があっても彼らが正当化されることは未来永劫ない。

 

 

について意見するのは貴重なことだが、この時代を生きる人間には到底認められることはないだろう。だが、今の流れを見て、いずれ歴史を第三者目線で他人行儀に俯瞰視する人が見れば、違う意見を持つかもしれない。

 

だが、それはロシアがアメリカ一強のこの時代を覆してからだ。しかし見ている限り彼らがこの世のトップになるということは考えられない。ロシア語も浸透していない。

 

  1. テトリス
  2. ウォッカ
  3. ボルシチ

 

あたりのソフトだけでは世界も牽引できない。日本ですらできないんだから、世界トップの壁は高いのだ。

 

ただ、メンタル的な話は教訓があった。ソ連時代に共産主義の思想を本当に信じたロシア人は、ソ連崩壊後、

 

(じゃあ今後どうすればいいんだ)

 

という精神状況になった。そして自然とその心の穴埋めをする為に 『ロシア正教』が浸透し、至る所にその様子が見えるようになったという。

 

映画としてはオリバー・ストーンが敵のホームでかなり思い切った質問をして見応えがある。常に苦虫を嚙み潰したような表情をしていたが、今振り返ってみると彼が心で懸念していたようなことは『正解』だったのかもしれない。