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『サムライ』 レビュー(感想)と考察

『サムライ』

ポスター画像出典:『Amazon

 

 

「侍ほど深い孤独の中にいる者はない。おそらくそれは密林の虎以上だ ――『武士道』より」

 

そのメッセージが現れ、アラン・ドロンが『フランス版の侍』を演じる。侍といっても、そのスピリッツを持った孤独な男のことを言う。だが、それは新渡戸稲造も言い回しが下手か、あるいは抜き取ったこの製作者が青い。『孤独』と『孤高』は違うからだ。

 

新渡戸稲造の著書『武士道』にはこうある。

武士道が掲げる”7つの神髄”、

 

  1. 『義』─武士道の光輝く最高の支柱
  2. 『勇』─いかにして胆を鍛錬するか
  3. 『仁』─人の上に立つ条件とは何か
  4. 『礼』─人とともに喜び、人とともに泣けるか
  5. 『誠』─なぜ『武士に二言はない』のか
  6. 『名誉』─苦痛と試練に耐えるために
  7. 『忠義』─人は何のために死ねる

 

この『7つの神髄』を注視しても、武士が抱えるプライドが『孤高のもの』であることが一目瞭然となっている。

 

 

だが、それをあえて『孤独』とし、明るさや肩身の狭さを主張したいなら、確かにこの『ヒットマン』という認められざる職業に就く闇の住人は、そうなるだろう。

 

未だに世界中から日本が『侍、忍者』と言われ、それらの人気が衰えないのは、それらが『辿り着いている』からだ。ブッダ(釈迦)孔子もそうだろう。辿り着いている。新渡戸稲造の本には『自分をもっと深く掘れ』というものもあるが、そうして自分の道を専門家のごとく深く深く掘り下げていくと、そのうちある境地に辿り着く。

 

その境地は、まるで日本刀だ。研鑽して鍛錬し、いくつもの辛酸をなめながら一朝一夕にはいかない試行錯誤を重ねて、ようやくたどり着く名刀の境地。あれもまた、世界に通用する『巧が辿り着いた終着点』の一つである。

 

 

もちろん葛飾北斎が言ったように、

 

職人は『これで完成した』とは言わないだろう。だが、侍や忍者も、あれ以上の境地に辿り着くことは、有限の制限がある人間には困難を極める。フランスという日本から遠く離れた場所で、しかし一致した一つの精神。それは、たった一人で己と向き合うことを強いられた、人生と戦う男の終着点だった。

 

 

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