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ポスター画像出典:『ヤフー映画』
エル・ファニングもクロエ・グレース・モレッツのように、難しい役を演じているのをよく見かける。これは、彼女たちが子役から成功し、その後一生役者として生きていくために必要な、登竜門なのだろうか。若く柔軟性があるうちに、凝り固まってしまわない前に、カメレオンになれるように訓練をしているようにも見える。
だが確かに彼女らは、カメレオンになれているわけではない。そういう風には見えない。同じ若い役者の例で考えると、弱冠24歳で亡くなったジェームズ・ディーンは、カメレオンだった。カメレオンというほど多くの映画には出ていないが、しかしそのほとんどすべての映画で、違う顔を見せているのが伝わってくる。『全部がキムタク現象』にはなっていないわけだ。
キムタクの悪口ではない。時代が彼をそうさせたのだ。当時、キムタクというのは魔法の言葉だった。社会現象にもなるほどの、イケメンのアイコンだったのだ。だから『次のドラマでもキムタクが見たい!』という強いニーズがあった。彼はそれに応えただけだった。彼は役者ではない。アイドルだ。その他にも色々なことをやっている人間だ。もし彼が役者だけで生きていくことを覚悟した人間であれば、彼とてカメレオンになっただろう。それだけのことだ。
その意味で、カメレオンになれないと役者人生は後がない。だから例えばシャーリーズセロンは、「セクシーなブロンド役」ばかりのオファーが寄せられたが、意図的に様々なジャンルの作品に出演し、演技派女優としての地位を築き、2003年の『モンスター』でアカデミー主演女優賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞、ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)などを受賞するわけだが、その時の彼女の変貌ぶりからは、彼女の役者としての意地を感じることができた。
だが例えばアンハサウェイは、2001年公開の『プリティ・プリンセス』により人気女優となったが、プリンセスのイメージが定着し、理想の役が得られずに低迷してしまう。そして、2005年公開の『ブロークバック・マウンテン』でアイドル的なイメージを払拭し、じわじわとその地位を確立していくわけだ。そうした先輩たちの実績もあって、子役から成功している彼女らは、体当たりに難しい役柄に挑戦しているように見える。
今回もかなりニッチなケースの話だ。スーザンサランドンやナオミワッツといったベテラン女優に支えられながら、何とかその役を奮闘している。が、まだまだ『エルファニング』を捨てきれていない印象だ。この現象はキムタクのそれもそうだが、同じ美形女優で知られるブレイクライヴリーの『リズム・セクション』などもそうである。
彼女もまたセクシーな若い女性を求められることが多いが、いつまでもその役はできない。少しずつ『味変』しているように見えるが、リズムセクションでの彼女もまだまだ、『ブレイクライヴリー』を捨てきれていない。だから中途半端な結果に終わっている。
シナリオはいいのだが、彼女が美しすぎる。彼女もそれに気づいていて、それにしがみついてしまっている。それでは演技の幅は狭くなる。エルファニングも美女だしキムタクも美男だから、似たような現象に陥っている。
姉のダコタファニングはというと、美女の路線とは言えない。内気な路線に行っている。よって、こっちもカメレオンとは言えない。このままではよくいる『個性派俳優』の方向に行ってしまうだろう。
その意味で、『魔女がいっぱい』でのアンハサウェイ、『ダークナイト』でのヒースレジャー、『ディパーテッド』でのジャックニコルソンや、『12モンキーズ』でのブラッドピット、『モンスター』でのシャーリーズセロンなど、単なる美男美女でもない、個性派俳優という枠でもない、『偉大な俳優』の枠に彼女たちが入れるかどうかが、見られている。
これは無責任な勘だが、ブレイクライヴリーでは無理だろう。美しいが、それに頼り過ぎているところがある。クロエグレースモレッツとエルファニングは、まだどうなるか分からない。彼女らはほぼ同年代の、24歳程度だ(2022年)。10代の頃は仲が良かったので今もそうかもしれない。二人ともその若さでは考えられないほど多くの作品に出演している。大化けするかもしれない二人である。
性別不合