『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』
ポスター画像出典:『ヤフー映画』
人間の脳が最後まで機能するのが、何かを見て(美しい)と感じる機能だという。(汚い)と思う機能ではない理由は何だろうか。それはもしかしたら虫嫌いの人が死に際に虫を見て、そこに『共にこの世を生きた生命という盟友』という境地を見出すように、人がこの世の一切の森羅万象を分け隔てなく見ることができる目が開花するからだろうか。
華やかな街並み、煌びやかなネオン、夜空を彩る大花火、若い女性たちの化粧に扇動される香水。キラキラ光る宝石や、豪華絢爛なアーティストのエンターテインメント。我々は往々にして『躍動するエネルギー』に魅了され、それは往々にして『最盛期』である。
名探偵コナンがシャーロックホームズに憧れるのは、彼の頭脳が明晰で、芸術的な格好良さがあるからだ。では、93歳のホームズには、何があるだろうか。我々はしかし、その名を聞いただけでそこに煌びやかな何かがあると期待してしまう。
だが、それはない。だとしたらそこに価値はないのか。この世界は『躍動するエネルギー』だけが価値を持ち、衰退した生命の呼吸に、美しさは見いだせないのか。我々は人生の黄昏時を迎えたシャーロックホームズから、何を得られるだろうか。