ポスター画像出典:『Amazon』
主演のアネット・ベニングはもう中年以降の年齢なので、この映画に華を期待することはできない。エルファニングはいるが、彼女の華で勝負しているような映画ではない。『マレフィセント』などはそうだ。彼女がマレフィセントの『守るべき娘』として、王女のように扱われるから華が光っている。だがこの映画は批評家・観客の双方から称賛され、特にマイク・ミルズの脚本と演出及びアネット・ベニングの演技は「キャリアベストの仕事」と絶賛されたようだ。
アネットは、ここからほぼ20年前の40歳頃の映画に、デンゼルワシントンとの映画『マーシャル・ロー』があるのだが、その映画では『昔は美女だったはずのベテラン女優』ぶりが見られることから、更に10年以上若ければもっと美貌が光ったのかもしれない。
だが彼女の10年前というのは1988年で、実はそこがデビューの年ということもあるのか、大した作品には出ていないのである。コリンファースとの『恋の掟』は見たが、あまり彼女の美貌には気づかなかった。今回の映画の前の6年前に『キッズ・オールライト』というニッチな映画に出ていて、彼女は賞も受賞している。そういう意味もあってか、彼女は難しい役どころを演じる方が似合っているのかもしれない。だが、個人的にはマーシャルローの彼女も中々はまっているように見えた。
演技派ということなのかもしれない。だから難しい役も務めることができる。今回の映画は「キャリアベストの仕事」と称賛されたのだから、そうなのだろう。だが実は、彼女がこの映画でそう大きく目立つことはない。『キャプテンマーベル』のようにドカンと前に出るわけではないし、『ブラック・スワン』のナタリーポートマンのように彼女中心に動くわけでもない。どちらかというと『下宿の管理人』という役通りの、縁の下の人である。
また、息子であるジェイミーの俳優がほぼ無名であることからも、かなり面倒な仕事を任されている感じだ。だが、それが良かったのだろう。その無名の反抗期の息子がいて、独特の価値観を持った知人がいて、複雑でニッチな環境の中、いかに彼女が自分の生きる道を見失わず、正しい道を選択できるか、ということが問われるわけで、その役をこなすのは容易ではない。
子供は『それまで教えられてきた常識』から逸脱することで、自我の存在を確認するもの。思春期にちょっとした悪さをしてしまうのは、自我が芽生え始めたからだ。
(親はこうだと言ってたけど、こうもできるじゃん。)
テストの意味も兼ねて色々やってしまうこの時期に、しかし、取り返しのつかないこともやってしまうもの。シングルマザーとして男役も演じなければならない中、彼とともにどう生きるか、ということを道を模索する彼女の姿に、教訓を見るということなのだろう。