『7番房の奇跡』
ポスター画像出典:『ヤフー映画』
実話映画というが、かなり脚色されているので真には受けない方がいい。だが、とにもかくにも感動したい人は、真に受けた方がいい。映画とはドラマであり、2時間にまとめられたその内容は、ドラマチックでなければならない。起承転結があり、笑いと涙があり、多くの感情が揺さぶられれば人の心に残り、それが作品を支えれば利益が生まれ、キャストやスタッフたちの人生が支えられれば、また視聴者たちを喜ばせるエンターテインメントが生み出される。
私はマガジンを入れれば本を1000冊以上読んでいるが、その中にほとんど作家が書いたフィクションの小説はない。ゼロと言っていい。人生は、フィクションに触れて感傷に浸る時間はそう多く与えられていない。人生が無限とか1万年ぐらいあるなら1000年はそうした時間に触れてもいいが、有限である以上、私はあまりフィクション(誰かの利益の為に、誰かの意図で作られた作り話)に触れる時間は避けたい。
漫画やアニメはよくて、作り話の実写に距離を感じるのは、そこに実際に人間がいて、『演技をしている』のが明白だからだ。前者なら完全にそのキャラクターとしてこの世に生み出されたが、後者はスタッフが作った作り話を、役者が演じている。
この映画は、1972年に春川市で派出所所長の9歳の娘が性的暴行を加えられて殺害された事件がモチーフになっているが、脚本はフィクションだ。そして恐らく、そのフィクションの部分にこの映画の良さが詰まっている。
数百年以上も前の歴史映画なら仕方ないが、ここまで最近の話で、実話ベースというが、どこまでが本当にあったことで、どこまでが作り話なのかが分からないこの手のものを見た時、私の心は複雑である。
したがって、冒頭でああ言ったのだ。私も最初は真に受けて映画を観て、感動した。そして後で『完全には実話じゃない』と知って、幻滅した。だが裏を返せば私がこうしてくどくどと文句を言うほど、『惜しい』ということなのだ。それほどこの物語は、いいものだったのだ。