ポスター画像出典:『ヤフー映画』
ロバート・レッドフォードというのは本当にいい映画を作る。いや、私にハマっているだけかもしれないが、だとしたら彼は東洋に通じる内向的な精神修業を積んでいる人間だ。アメリカ人を筆頭とした西洋人は、その逆でもっと大雑把で、よく言えば豪快な印象があるだろう。だが、コロナ騒動で最も感染者が出たのが群を抜いてアメリカであり、自由の権利と引き換えに銃の乱射事件等の理不尽な事件を多発させ、その代償を支払っている。
そのように、まず豪快に行動して、後でその行動を考える。そういう、悪く言えば後先考えないような、頭より先に体を動かすという姿勢からは、教訓性も得られるし、反面教師性も得られる。リチャードギアが来日した時、『日本の女性は奥ゆかしい』と言ったが、その通り日本というのは、一歩引いた立ち位置から人をじっと見守ったり、応援する習性がある。
海外では、もっと過激にパフォーマンスをし、大げさにリアクションするのが普通だ。だから、この間日本のアニメ映画の鑑賞中に、映画館で大騒ぎしたフランス人が、出入り禁止になる騒動が起きた。これは、
等のアニメ映画ではよく見られた行動で、今回更に大きな騒動に発展したという。日本でそういうことがあるだろうか。
そういう西洋の文化が合わない西洋人もいる。キアヌリーブスは来日すると黙ってラーメンを一人で食べにくるというし、クロエグレースモレッツも、日本人のように一人でご飯を食べたいと言っていた。アメリカでは、一人でご飯を食べる習慣がないという。そういうアメリカで、彼のような人間は貴重だ。
アメリカにも内向的な人間はいて、例えば、『PRESIDENT』、2015.1.12号にはこうある。
ビル・ゲイツもアル・ゴアもガンジーもみんな内向型だった
(省略)あらゆる物事に対し、自分の意見を表明するのが当然のアメリカ、意見を表明したい場合のみ、その機械が与えられる日本。初等教育からそうなのだから、かの国で雄弁で行動的、人々の先頭に立つ外向型人間がもてはやされるようになるのも当然だ。ところが、そんなアメリカで、まるで対極の書籍が売れている。現代が『Quiet』、邦題は『内向型人間の時代』。
アメリカでミリオンセラーになり、日本でも2013年に発売。14年に入り続々と関連の書籍が出版され、テレビでも特集が組まれている。著者はスーザン・ケイン。自身も、内向型人間であり、外向型を理想とするアメリカ社会での生きづらさを抱え、ウォール街で働く弁護士からライターに転身したという女性だ。
学者や芸術家に内向型が多いといわれれば違和感はない。たとえば科学者のアインシュタイン、音楽家のショパン、小説家のプルースト、映画監督のスピルバーグなどだ。もちろん、ビジネスや政治の世界でも内向型のリーダーは多く存在する。マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ、同グーグルのラリー・ペイジ、政治家アル・ゴア、インド独立の父ガンジーなどをケインは例として挙げる。
・・このように、内向的な人間には偉大な人間が多い。『普通の人々』もそうだったが、ロバートレッドフォードの映画というのはそういう内向的な人間じゃなければ描けない作品が多い。
彼のように、容姿が揃っていて美男子というのが売りで、しかもそれが大きく仕事に関わってくる役者というビジネスをしていて、内向性を大事にできているというのは、一言で偉い。この映画はイラク戦争の真っ最中に公開されている。そのことが、アメリカ人にとってどれだけ重要か、わかるだろうか。