ポスター画像出典:『公式』
ときて、REDになる。人気投票でStrong worldが一番だったらしいが、私からするとこの中では最も下だ。それまでは『子供騙しのアニメ映画』の粋を出ず、観ようとも思わなかったが、『Z』で単なる子供映画の枠を超えた。
だが『GOLD』でまた少し『本編にはそうカンケイない、観ても観なくてもそう変わりはないお祭り』のような方向に行ってしまうが、『Stampede』で全てを取り戻す。ワンピースがようやくここまで来たと、大人の心も揺り動かす展開があった。
そして『RED』だが、元々『竜とそばかすの姫』で幻滅してしまっていて、多分タイアップ的に歌手の歌を聴かされるんだろうなあと。そして、また『本編にはそうカンケイない、観ても観なくてもそう変わりはないお祭り』になるような気がして、期待はしていなかった。ファンでもないし歌手がAdoであってもその期待は変わらないが、だが、(もしかしたら)という一縷の望みがあったのは確かだ。
結果、確かに歌手とのコラボにありがちの、『まず曲があってそれをしっかりと流して、アニメをそれに合わせて踊らせる』という展開がある。そうなると客は、『歌がどれだけいいか』ということと『アニメとどれだけシンクロするか』ということだけに注目せざるを得ないことになる。
『グレイテスト・ショーマン』でも途中で『歌の上手い女性の歌をどうだ、とばかりに聴かされる時間がある』のだが、確かに上手いし、頭一つ抜けている何かがあるのだが、『タイタニック』の背景で流れる挿入歌なんかと違って、『どや!』とされると、人は少し抵抗を覚えるものである。
『ボディガード』のホイットニーヒューストンは劇中でも歌うが、静かに歌いだして『どや感』がなく、自然と調和して心をつかみ、そのまま心を揺り動かしてくれるのでうっとりとできるが、あまり劇中でがっつり歌われると、まるでテレビ番組の中に挟まってくるスポンサーの広告か何かを見ているような、そんな冷めた気持ちになってくるものだ。
『新時代』という中田ヤスタカプロデュースの曲が流れる。(やはり、どこか押しつけがましい)と抵抗を覚える。綺麗ごとを歌っている嘘の景色のようにも見え、ワンピースの世界が少し穿って見えてしまう。
・・だが、もしかしたら『それ』も計算通りかもしれない。途中、物語の真相が徐々に明らかになっていくうちにつれ、『逆光』という曲が流れて雲行きが変わっていくと、急にこの作品の持つ実力が発揮されてきた。これがAdoの実力だ。
そして終盤、『あの男たち』の登場で、物語は最高のクライマックスを迎える。今回、過去最高の映画だった『Stampede』を超えたかは分からないが、それに匹敵する名作を楽しむことができた。もしかしたら色々な『風刺』が混じりこんでいるかもしれないような、意味ありげな展開もあって、『時代』『新時代』というキーワードというのはこの映画の枠だけに収まらないかもしれない。
ここからはほんの少し内容に触れる。
最後3000本観た映画ファンから『映画の完成度』という観点から言わせてもらうと、タイアップとか後付けってことをもっと隠すために、ウタはせめて最後、
『歌(楽譜)に飲み込まれていく』
という感じにしたらもっと良かった気がする。
『え・・何この楽譜すげえ・・』
みたいにどんどん歌に乗っ取られていって、狂っていくという風に。ちょっとすべての歌が『最初から最後まで完璧に歌いすぎてる』ところが、Adoとのタイアップ感が出てしまい、もったいなかった。
『抑揚』だ。『ボディガード』のそれのように、作品との一体化レベルを引き上げるためには、途中でCDを入れて流したような感じにしない方がいいので、歌いながらそんなことを呟いて、もっと作品に『なじませた』方がシンクロ率が上がって不自然感がなくなり、最高に仕上がったかもしれない。
Adoのような歌い方は簡単にまねできるものではないし、パワフルで狂気に満ちていて、若い世代の心を掴むだけにふさわしい能力があるが、『抑揚』をコントロールすれば更にとんでもない化け物アーティストになるかもしれない。