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『サウルの息子』 レビュー(感想)と考察

『サウルの息子』

ポスター画像出典:『映画.com

 

この映画にまた低評価ついてるがきっと着眼点を間違えてる。他の映画に影響されて『常識』に囚われ、『その常識通りの展開』がないから肩透かしを覚えるのだろう。だが、これは極めて貴重な映画である。 私は強制収容所経験者の『夜と霧』を読んだが、絶対にこれが映像化されることはないと確信したものだった。彼らがアウシュビッツを含めた強制収容所で経験したことを具体的に描写することは、あまりにもおぞましく、一生のトラウマになる人も現れると感じたからだ。

 

その後『シンドラーのリスト』など様々なホロコーストの映画を観た。それぞれとても衝撃的だった。だが、この『サウルの息子』ほどこの内容を描いたものはなかった。だが、これももちろん直接は描いていない。あくまでも 『収容所で人探しをしてさまよっている人の、背景に映りこんでいる』 という体で、ボカシたり部分を映したりしてそれを描いているのである。だから着眼点を間違えたら、

 

なんなんだよこの映画、さっきからさまよってばっかで、何がしたいんだよ

 

ということになるだろう。しかしそれは知識と経験と想像力不足だ。 『彼が動き回るから全体像が映せる』のだ。そして『これが限界』なのであり、そしてこれはそれ以外の軸で考えても、とても貴重な『資料』である。