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『ロリータ』 レビュー(感想)と考察

『ロリータ』

 

 

1997年の、2度目に映画化された方を先に観ていたが、スタンリー・キューブリックの方が面白いかもしれないとして鑑賞。だが、この作品でキューブリックが『性的な部分を思うように描けなかった』と言っているように、時代が邪魔して物語の本質を正確に演出できているのは97年版の方だと言えるだろう。

 

97年版は、制作中にアメリカの児童ポルノ禁止法が制定されたこともあり、アメリカより先にヨーロッパなどで公開されたが、児童の性犯罪事件が問題化していたイギリス、ドイツ、ベルギーでは上映反対運動が起こり、62年版のこれでもカトリック団体からの抗議があった。そのカトリックが児童に対して性的虐待をしているのだから何の説得力もないが。その真相は『スポットライト世紀のスクープ』で見ることができる。

 

「ロリータ・コンプレックス」、つまり『ロリコン』とは、この映画の原作から生まれた言葉である。少女を愛してしまう中年男性のこの物語から生まれたその言葉は、今はもうこの世界にすっかり浸透し、ある種の軽蔑的なニュアンスを込めて、言い放たれることが多い。では、なぜ彼は少女を愛してしまったのか。その理由は、物語の最初の段階で明らかになる。