Contents|目次

『バリー・リンドン』 レビュー(感想)と考察

バリー・リンドン

ポスター画像出典:『映画.com

 

『七年戦争』は1754年から1763年まで行われた戦争で、軸となるのはイギリスVSフランスである。そこにオーストリアやアイルランドも巻き込まれるわけで、アイルランド人として生きる主人公のバリーもこの戦争と無関係ヅラをするわけにはいかなかった。そういう貴重な歴史を通過する点においても貴重な作品だ。更に、この原作がサッカレーという著名人であること、監督がスタンリー・キューブリックであるということが加わり、価値が一層に引き上げられている。

 

黒澤明ばりに細部にまで入念にこだわられただけあって、アカデミー賞の撮影賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞を受賞していて、確かに非常に豪華な時代劇を見ることができる。鬼才キューブリックの作品らしからぬ『正統派』的な内容で、彼が本気を出せば王道映画も作れることを見事に証明してみせている。彼の作品のラインナップを見てみよう。

 

  • 1971年:時計仕掛けのオレンジ
  • 1975年:バリー・リンドン
  • 1980年:シャイニング

 

攻めた作品に挟まれるようにこの映画があるのがわかる。実は興行的には苦戦し、制作費を回収するのに時間がかかり、『シャイニング』のような『売れる映画』に手を伸ばした背景があるという。私もTwitterで映画ファンにアンケートを取り続けているが、やはり名作として選ばれる映画に歴史映画が上がることは稀である。人間の歴史的には貴重な価値があっても、それが万人受けするかどうかとはまた別の話なのである。