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『突撃』 レビュー(感想)と考察

『突撃』

ポスター画像出典:『Amazon.co.jp

 

フランス軍のブルラール大将はドイツ軍の堅牢な陣地、俗称『アリ塚』を陥落させようと画策し、ミロー大将の師団に攻撃を命令する。このように、『この陣地を取れば戦況がこちらに優位になる』という話は覚えておいたほうがいい。様々な戦争映画によく出てくるシチュエーションだ。往々にして、そこを取るために命がけで戦い、多くの人が命を失われる。『戦争の最前線』として多くのドラマが生まれる舞台でもあるので、スポットライトが当てられやすいのだ。

 

情報というものは包括的に集めなければ実態が見えないわけで、この1957年の『突撃』と並び『フルメタルジャケット』も「反戦映画」と称される事があるが、キューブリック監督自身にはいずれにも「反戦映画」という意識はなく、脚本家マイケル・ハーはキューブリックから「戦争そのものを映画にしたい」という企画意図と『突撃』が「反戦映画」と見なされていることに対する落胆を聞いているという。

 

これは『フルメタルジャケット』のWikipediaにある情報だが、しかし実はキューブリックのWikipediaページには『反戦映画の突撃』とある。動画配信サービスにも『反戦映画の名作』とあるが、恐らく彼のことだから『反戦映画ではない』というのが正解だろう。なぜそう言えるのかというと、『時計仕掛けのオレンジ』の宣伝コピーを、

『レイプとウルトラ暴力とベートーベンがオレの生きがい。』

 

というセンセーショナルなものに作り上げた時の話だ。この映画に触発され、犯罪に走る若者が増えた。だがキューブリックはこう答えた。

『芸術家は作品の芸術性にだけ責任を持てばいい』

 

彼は人間の持つ『生のカオス』にスポットライトを当てたかったらしく、その他と違うある種非常識な考え方があるからこそ、彼の作品は異彩を放つのである。