ポスター画像出典:『映画.com』
トーマス・マン作の同名小説の映画化。正直、これが名作だと言う人はノーマルではない。現在はLGBTの主張も当然になりつつあるから何がノーマルかという問題もあるが、いわゆるこれまでノーマルと言われてきた人生を送ってきた人間からすれば何がしたいのかチンプンカンプンだ。
ただ、そこがこの映画の価値である。要は、『そうは思わない人』もこの世にはいるわけだ。そういう人に響く映画というのは、ノーマルウケするそれではないのであれば、こういう映画はそれらの人にとっての名作なのである。以前、アウトローや冒険家などの際どい生き方をする人を特集する番組で、性別不合かその系統の男が、外国の『その手の人が通うサウナ』のようなところに行き、カメラもそこに入っていた。
そこで彼が言ったのは、『絶景ですよ。皆さんも、美女が泳ぐのなんかをこうして眺めながら、お酒飲むと美味しいでしょ。僕も同じことですよ』。男性がプールで泳ぐ姿を見て、ある種の幸福感を得るというのだ。この感覚は要はノーマルと言われる私その他の人には分からない。だが、そうして彼の言ったことを真に受けて考えるなら、そういうことなのである。