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『記者たち 衝撃と畏怖の真実』 レビュー(感想)と考察

『記者たち 衝撃と畏怖の真実』

ポスター画像出典:『映画.com

 

イラク開戦をめぐる「大量破壊兵器」捏造問題を実話を元に描く。アメリカはイラクに『大量破壊兵器がある』と断定してイラク戦争を勃発。それがどういうことかというのは『華氏911』を観るのがいいだろう。原題の「衝撃と畏怖」は米軍の作戦名から採られている。映画ではブッシュ元大統領を始め、その副大統領の『バイス』で主人公となったディック・チェイニーその他多くの政治家たちのテレビでの発言が引用され、その背後で新聞記者たちがどのように考え行動していたのかを描き出している。

 

とにかくアメリカは60年代のベトナム戦争においても『トンキン湾事件』で捏造し、ベトナム戦争に介入。911の後にも強引な拷問をして問題視された。そもそも911の原因はこうだ。

 

1.アメリカがユダヤ教の肩入れをして、パレスチナ(エルサレム)の地をアラブ人から奪った因縁があった。

2.アメリカ人の9割がキリスト教徒で、『イスラム教VSキリスト教』という宗教対立の構造があった。

3.湾岸戦争で『サウジアラビア』という地域を戦場にしたこと、アメリカ軍がここに駐屯したことがイスラム教への冒涜だと解釈された。

 

最も直接的なのは3番の湾岸戦争(1990年頃)での振る舞いだ。ベトナム戦争、湾岸戦争、911後の拷問、イラク戦争。彼らは常に一線を超えるような行動を取り続けていた。それが『前始末だ』という考え方もある。当人たちはそういう主張だろう。わあわあガヤで叫ぶのは簡単だが、国家の立場が転落したら自分たちが守り続けているその『自由な主張』など虚無に消える。勝者だからこそ、主張する余裕があるのだ。彼らはイギリス・フランスが第二次世界大戦で世界トップの座から転落して以来この世界のトップに君臨するが、同時に、米ソ冷戦もさることながら、常にその地位の死守の責務を負うことになった。

 

敗戦国や植民地の悲惨な現状を知っているだろうか。奴隷として売られる人間や、迫害される先住民の心情がわかるだろうか。彼らは常に『勝者』でいつづけることでそのアイデンティティ(身分証明)を果たし、維持してきた。その椅子の死守は恐怖にも似た執着でもあり、帝王学的な知性の上に成り立つ『カウンターインテリジェンス』でもある。

 

カウンターインテリジェンス

問題を未然に防ぐこと。例えば空港でテロリストを確保できればテロを未然に防げる。

 

アメリカは悪か、善か。それともこの世界は最初から混沌(グレイ)なのか。