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『エル・シド』 レビュー(感想)と考察

『エル・シド』

ポスター画像出典:『Filmarks映画情報

 

11世紀後半のレコンキスタで活躍したカスティーリャ王国の貴族エル・シドことロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール(Rodrigo Díaz de Vivar)の生涯を描いた作品。主演を務めるのは『ベン・ハー』でベン・ハー役を演じたチャールトン・ヘストンで、それを考えるといくつかの想像ができて面白い。例えば、『あれから1050年後』というシナリオだ。全く同じ顔の生まれ変わったベン・ハーが、今度はスペイン人かつキリスト教を守る信者として生まれる。そういう見方も面白い。

 

1080年頃の当時、スペインやポルトガルがあるイベリア半島では『レコンキスタ』という複数のキリスト教国家による再征服活動が行われていた。つまり、イスラム教の勢いが上がってきたので、キリスト教がそれを鎮めるというものだ。ローマ帝国で十字軍が誕生し、第一回の遠征が行われるのが1095年だから、この時代のすぐ後になる。そこから更に十字軍(キリスト教)とイスラム教の長い対決が始まっていく。

 

  • 1066年:ノルマンコンクェスト
  • 1077年:カノッサの屈辱
  • 1080年:エル・シドの舞台
  • 1095年:第一回十字軍遠征(エルサレム占領)
  • 1187年:サラディン時代
  • 1192年:武士支配(鎌倉幕府)

 

コンクェストというのは『征服』という意味だ。ノルマン人が現在イギリスがあるブリテン島に乗り込み、それを支配して征服。それまでアングロサクソン人が支配していたその地をノルマン人のウィリアム1世などが筆頭となり征服。この時開いたノルマン王朝が、イングランド王家の始まりとなり、その血筋は現在のエリザベス女王の王室まで続いているのである。そう考えるとこの事件がどれだけ大きなものかがわかる。

 

またカノッサの屈辱というのも歴史的に重要な場面だ。これによってローマ皇帝はローマ教皇『よりも格下』だと認識されてしまった。神聖ローマ皇帝(ハインリヒ4世)がローマ教皇(グレゴリウス7世)に波紋されて権力を失い、裸足で3日間も立ち尽くして謝罪した事件。この事件によって、ローマ教皇の権力がどれほどのものかということが世に知れ渡ることになってしまった。グレゴリウス7世は、ウルバヌス2世にローマ教皇の座を引き継ぎ、1095年に『十字軍の遠征』を命じる。ローマ教皇が帝国の舵を握るほどの権力を持ち始めたことで、十字軍遠征が生まれた可能性があるのだ。

 

舞台はちょうどその間のイベリア半島におけるレコンキスタの流れ。エル・シドをはじめ、当時実在した王国や国王たちが登場することもあり、歴史的に貴重な作品だ。