『レイチェルの結婚』
10年間薬物治療のリハビリ施設の入退院を繰り返していた女性が、姉の結婚式の為に戻ってきた。この映画は本当に結婚式の様子が作品全体を通して描かれている。鑑賞しながらその理由を考えると、コントラストの原理がそこに見えてくることになる。普通の、平凡な結婚式は、人が集まり、歌って、踊って、楽しいものである。だが、そこにどうも異質な存在がある。我々はそれを俯瞰で見て、どんな人間にも存在する心底に抱えたある種の闇と、幸福に対する執着にも似た渇望の心の是非を、自問することになる。
幸福は誰もが追っていたはずだった。だが、ある人の人生は道中で方向転換を余儀なくされ、ある人の人生は予期せぬ土砂崩れにより道半ばで終わってしまった。人は、幸せを求めていいのか。何があって、幸せと言えるのか。結婚式はそんな人々の心の不安と闇に蓋をする、麻酔薬に見える。