Contents|目次

『蜘蛛巣城』 レビュー(感想)と考察

『蜘蛛巣城』

ポスター画像出典:『Yahoo!映画

 

シェイクスピアの戯曲『マクベス』を黒澤明がリメイク。正直、この作品の映像があまり好きではなかった。基本、日本の時代劇を幼少期に祖母か何かの影響で観すぎたこともあって、ちょんまげなり、着物なり、そういうものに拒絶反応が。海外の人は逆に新鮮で唯一無二だから美しいと感じるだろうが、彼らとて見過ぎた地元の国の時代劇を見るのに飽きた人も大勢いるはずだ。

 

だが、この作品はその他の時代劇とは一線を画す。やはり黒澤明という人物は実力者なのだということを、自然と理解する映画となっている。私のように一歩距離を置き、冷めた目で見る、正直なことを言おうとする人間にこう言わせるのだからすごい。原作の世界観に能の様式美を取り入れているところは別にどうでもいい。能も、歌舞伎も、一度も観に行ったことはない。それが正直な感想だ。

 

だが、亡霊が出てくるシーンや、ラストシーンなど、私をテレビの真正面に黙って座らせるだけの迫力と異質な雰囲気を見事に作り上げている。そして、実は調べて今知ったのだが、ラストに主人公の三船が無数の矢を浴びるシーンがあるのだが、このシーンは実際に三船やその周囲めがけて本物の矢を射って撮影したという。いや、確かに私も

 

これはどうやって撮影してるんだ・・

 

と思いながら観ていたのだが、まさか本当に射ていたとは。細部までこだわるのが黒澤明だとは知っていたのだが、まさか本当に射っていたとは知らなかった。だとしたらこれは衝撃的な映画だ。ここまでやるから人の心をわしづかみにする。海外ではシェイクスピアの映画化作品で最も優れた作品の1つとして評価されている。