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『ヴェルサイユの宮廷庭師』 レビュー(感想)と考察

ヴェルサイユの宮廷庭師

ポスター画像出典:『映画.com

 

1682年のフランスに、現在、Wikipediaにも載っていないサビーヌ・ド・バラという庭師がいた。当時の王はルイ14世だ。ルイ14世というのは表向きには『太陽王』とも称されるほどの人物で、ヴェルサイユ宮殿を作ったことでも有名。今回は彼の『王たる一面』にスポットライトを当てて作られている為、彼が悪人としては描かれることはない。内容としても、彼のような『雲の上に存在』にいる人間から白羽の矢を立てられた軽いシンデレラストーリーのような話だから、主人公は庭師だ。そしてシンデレラと違うのは彼女がすでに『母親』としての立場にあるということ。だが、どうもその『母親』としての立場の雲行きがおかしい。彼女には複雑な事情があるようだ。

 

さてルイ14世だが、実はヴェルサイユ宮殿を作ったのは少し無理があった。当時の財務総監のコルベールが行った『重商主義』は絶対王政に大きな貢献をした。この体制を維持するためには、巨額の資金がいる。そこで、国家を富ませるために、外国製品の購入を制限し、国内生産力を伸ばそうとして国力を上げたのだ。金、銀、貴金属等の獲得と貯蔵と同時に、輸出を促進して貿易収支を黒字にする。すると、国内におのずとリソース(資金、財源)が蓄積されるわけだ。

 

また、領土拡大にも力を入れて、54年の親政の内の実に34年を戦争に費やした。植民地の獲得をして領土を増やせば、国内に流入するリソースが増え、そうした体制を維持、拡大することができるという寸法である。そして、20年の時間をかけてヴェルサイユ宮殿を造営し、1682年、宮廷をパリから移した。『太陽王』にふさわしい華やかな人生を送ったが、晩年は奢侈(しゃし)や戦費がかさんで国庫は激減し、衰退していった。そういう背景がこの物語の裏にあるのだ。