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『ハンバーガー・ヒル』 レビュー(感想)と考察

『ハンバーガー・ヒル』

ポスター画像出典:『映画.com

 

1969年、南ベトナムのアシャウ渓谷にある丘、ドン・アプ・ビア=通称“937高地”でアメリカ軍第101空挺師団と北ベトナム軍との間で繰り広げられた攻防戦「アパッチ・スノー作戦」を描いた作品で、詳細は事実ではなくても、この第101空挺師団や作戦、そして通称『ハンバーガーヒル』と呼ばれた戦場の丘などは実在したものである。兵士たちが次々と“ミンチ”にされていくほどの悲惨な戦況から、「この丘は俺たちをハンバーガーにしようとしている!!」と叫ぶ一人の兵士の台詞がこのタイトルの由来だ。

 

またこの映画のセリフにもう一つ『北ベトナム軍は訓練していて士気が高いから強い』 というものあるが、それは非常に重要なキーワードである。

 

  • 北:ベトナム民主、ソ連、中国等
  • 南:ベトナム共和、アメリカ、フランス等

 

実は、日清戦争で日本が中国に勝てた理由は、主体性である。本来、日本と清の能力はほぼ互角だった。武器の技術や装備、人数などに差はなかった。それなのに勝った理由は、日本に主体性があったからである。 李鴻章(りこうしょう)は西洋諸国の技術に感心し、『洋務運動』という近代化運動を行い、兵器工場の建設や鉱山の開発などを通じて、富国強兵を進めた。つまり、李鴻章ら清も、『洋務運動』という近代化運動をし、富国強兵を進めていたはずなのである。それなのに、なぜ日本だけが富国強兵に成功した形になってしまっているのか。実は、日清の軍事力は、同等だったのだ。それは紛れもなく、この洋務運動のおかげだった。

 

だが、この洋務運動には他の側面もあって、強い独裁政権を持つ皇帝のもと、官僚が一方的に国民を支配する体制が築かれ、『反応的』な兵士を集める結果になってしまったのだ。反応的とは、主体的の対義語。つまり、『何かに反応して初めて動く人』のことである。例えば、スティーブン・R・コヴィーは、著書『7つの習慣』で『主体者』と『反応者』の違いをこう断言している。

『率先力を発揮する人としない人との間には、天と地ほどの開きがある。それは、25%や50%の差ではなく、実に5000%以上の効果性の差になるのだ。』

 

 

もちろん日本軍全員に主体性があったわけではないだろうが、しかしそこにあったのは確実にこの主体性の違いだった。スティーブン・R・コヴィーが言うように、反応的な人間と主体的な人間の間には、雲泥の差が開くのである。それが日清戦争にも影響してしまったということなのである。

 

事実、このベトナム戦争も北ベトナムが勝った。アメリカのいる南ベトナムが負けたことには、こうした映画から見ることができる戦争への主体性の損失が関係しているかもしれない。