『不屈の男 アンブロークン』
ポスター画像出典:『映画.com』
アメリカのオリンピック代表選手ルイス・“ルイ”・ザンペリーニをが第二次世界大戦宙に日本軍に囚われたときのことを描く。ザンペリーニは第二次世界大戦中に搭乗していた爆撃機が墜落し、いかだで47日間漂流した後に複数の捕虜収容所へと送られた。そこで展開されるのは他にもいくつか映画がある『英国人捕虜と日本軍』の関係だ。
- 戦場のメリークリスマス
- 戦場に架ける橋
- レイルウェイ
- 太陽の帝国
など日本軍がイギリス軍人を捕虜にする話は他にもいくつもあるが、この映画で監督のアンジェリーナジョリーが『残酷な日本人』と指摘し、中国の抗日運動を煽るとして批判を食らったが、観たところこれのなにが問題なのかと疑問を持つだけだった。単純にいい映画だ。これくらいのことはしたはずだろうし、日本はこの映画のどこを公開されたら困るのかがわからなかったわけだ。
だが今調べてみると、映画にはなっていないが原作の部分で、
「何千人もの捕虜が、死ぬまで叩くか焼くか刺すか棍棒で殴るかされたり、撃ち殺されたり、斬首されたり、医学実験の過程で殺されたり、儀式的 (ritual) なカニバリズム行為で生きたまま食べられたりした」
という記載があることが分かった。この記述は九州大学生体解剖事件と小笠原事件に基づいているようだ。このリンクはwikipediaに飛ぶので詳細はそこで確認したい。「生きたまま」食べられたという点は誤りだが、死んだ後に食べたという事実が書いてある。確かに、それをやったとなると『得体の知れない小民族』という恐怖も手伝って、そう表現せざるを得ないだろう。
ただそれもちょっとした偶然で変わる感想ではある。この映画で彼は漂流した時、律義にも友人の遺体を海に流すが、違う映画、例えばあのメルヴィルの『白鯨』のモデルとなる話を描く『白鯨との闘い』では、遭難して生き延びる為に『さらっと』遺体を食べて生き永らえるシーンがある。もちろんそれは現場での表現で、後になるとその行為を悔い続けるのだが、窮地ではそういうこともありえるだろう。もちろん正当化ではない。これはハーバードで最も人気がある講義『これからの正義の話をしよう』にも登場する議題なのである。
だが、『ラストエンペラー』では日本人が人体実験をしたり、生きたまま人を埋めたり、死体で菌を操り、細菌やウイルスなどを利用した生物兵器を作ろうという動きを見ることができる。だがそれもそこだけをピックアップするのは間違いで、遥か昔の戦争においてもそのようなことはあったのだ。単純にwikipediaから抜粋してみよう。
- 古代ギリシアでは、アテナイ軍がヘレボルスという有害な植物をキルハの水源に投入し、住民は激しい下痢をおこし、アテナイ軍は侵略することができた。
- 東ローマ帝国は城壁都市に昆虫爆弾を使い、トンネルに蜂を放って敵を撃退したり、サソリを入れた爆弾を投げつけたりした。
- 西暦1000年から1300年には、蜂の巣の投下が行われた。
- 1348年にはジェノバの港街カッファでモンゴル軍が生物兵器として病気の患者の死骸を投下し、ペストを広めた。
- 1710年、エストニアのタリン(レヴァル)でペストが広められた。
- 1763年6月、ポンティアック(オブワンディヤグ)の叛乱で天然痘に汚染された毛布やハンカチが配布され、ジェフリー・アマースト少将は「忌まわしい人種を絶滅させる」と述べた。また、アメリカ独立革命で天然痘が繰り返し発生したが、これも細菌戦としておこなわれたという。
生物兵器というのは日本がやらなくても他の誰かがやった可能性がある手段の一つだ。もちろんそれも含めて全部正統化はできない。私からすれば、誤訳による間違いを世界にさらすのは当然批判の対象だが、実際にそういう事件があったのなら公開するべきだと判断する。我々はそれが他国のことならそう考えるはずだ。自国のことだと隠蔽したくなるなど、言語道断の人間のクズである。
中々論争を巻き起こしある意味有名になった映画で評価も低くつけられているが、それはこれらの事情を正確に処理できていない人間の感情的な暴走だろう。正確な評価ではない。我々は『こういうこと』が起こることは前提で生きなければならない。間違いなら正して次に進めばいいだけだ。いきなり一発目で完全にはできない。
youtubeにスペシャルメイキング映像があるのでそれも参考になるだろう。