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『シューテム・アップ』 レビュー(感想)と考察

『シューテム・アップ』

ポスター画像出典:『ヤフー映画

 

「シュワちゃん」名付け親で有名な映画評論家淀川長治は、「どの映画にも見所はある」が持論で、どんなB級映画でも決して悪口を言わない。俳優の児玉清は『土曜洋画劇場』の解説を務めたとき、四流映画の解説を正直に酷評したところ、監修の淀川から「解説者がひどい映画と言ってしまってはいけない。それは見る人に対しても失礼だし、作った人に対しても失礼だ。必ず褒めなさい。よいところが必ずどこかあるはずだから、必ず褒めて視聴者に勧めなさい』と言ったらしいが、私は解説者じゃないので正直に言わせてもらう。

 

これは見ても見なくてもどっちでもいい映画だ。何を訴求したいのか、どんな時間と映画体験を視聴者に与えたいのか、上映時間86分というところも含めてすべてが中途半端である。

 

凄腕のガンマンがいる。『だから何なんだ』ということを映画で表現しなければならないのに、ただのガンマンを観た印象。これなら、『シティハンター』のように、『本当は天才ガンマンだが、普段は全くそれとは無縁のすけべなおっさん』を観る方が楽しい。

 

彼がいつ銃を取るかとか、なぜ銃から距離を置いているのかとか、そういうドラマが面白いのであって、SFチックでもあり、リアルっぽくも描かれて、結局作り話なんだったらもっと振り切ったものを作らないと、作品の端に追いやられるのがおちだ。この作品が「映画館スタッフが選ぶ、2008年に最もスクリーンで輝いた映画」第98位に選ばれるのも無理はない。

 

淀川さんも、こと評論においては非常に舌鋒鋭く映画に踏み込んでいたようで、何度か対談したことがあるビートたけしによると、「こうすれば売れるだろう」といういい加減な計算の作品をすぐに見抜き、酷評していたと言う。きっと『日曜洋画劇場』ではこの作品において『あの女性の脚が何とも色気があっていいんですよねえ』などと、評価しただろう。