『42 〜世界を変えた男〜』
ポスター画像出典:『Amazon』
アフリカ系アメリカ人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンを描いた伝記映画。彼は、『史上初の黒人メジャーリーガー』として歴史に名を刻むことになる。タイトルの「42」とはロビンソンが付けていた背番号で、現在アメリカ・カナダの全ての野球チーム(メジャーはもとより、マイナーリーグ、独立リーグ、アマチュア野球に至るまで)で永久欠番となっている。
それほどの偉大な選手だったか。いや、もっと記録を出した選手は大勢いるだろう。ではなぜ彼がそこまでフィーチャーされ、評価されるのか。1945年、第二次世界大戦が終わった年だ。当時はまだ黒人差別が激しく、公衆便所も『当然』、黒人と白人は分けられていた。だが彼は、まるでキング牧師やメドガーエヴァースのように、人種差別に対して毅然とした態度で立ち向かい、戦った。
1947年、彼はドジャースに入団。当時、メジャーリーグも白人だけのものだった事から、彼の入団は球団内外に大きな波紋を巻き起こす。当たり前のようにヤジが飛ぶ。
『おい二グロ(黒人野郎)!ここはお前が来る場所じゃねえんだよ!』
この程度のヤジなら、彼は耐え忍ぶことができる。問題なのは、これ以上のことが、連続して彼の身に襲い掛かるということである。
2018年のドキュメンタリー映画『華氏119』を観れば分かるが、実は黒人差別問題はつい最近でも当然のように行われている。ドナルド・トランプは堂々と演説で黒人たちを揶揄し、ある映像では、白人の一見して普通に見えるおじさんやおばさんらが、黒人を見つけるやいなや殴りかかって、まるで不良少年が敵の不良少年に殴りかかるかのような勢いで、憎しみをぶちまけるシーンを見ることができる。
この映画は、アメリカとカナダで公開から3日で、2730万ドル(約27億円)を売り上げて初登場1位となり、野球映画史上最高のオープニング記録を打ち立てたようだ。
だが、アメリカ人が一体どのような思いでこの映画を観たのかと考えると、複雑な心境になる。いや、冒頭に書いたように永久欠番を守っていることから、全体的にはリスペクトしているだろう。言うなれば、キング牧師やメドガーエヴァース、あるいはマルコムXらが言葉巧みに演説で人種間の平等を訴えたのであれば、彼は口を閉じ、ただひたすら野球のプレイで自分の役割を果たしたのだ。
こういう者たちの繋いだ勇気で、今がある。いつかアメリカから差別がなくなる日まで、勇気の炎は、燃え続ける。