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『山口組三代目』 レビュー(感想)と考察

山口組三代目

ポスター画像出典:『GYAO!

 

当時の東映社長は『ゴッドファーザー』を見て気に入り、「日本で当てはめるなら山口組だ。これをやるのは自分しかない」と思い立ったという。日本人からすれば身近にある暴力団、ヤクザというイメージがすこぶる悪いので拒絶反応を示すが、世界的に見ると、『山口組、YAKUZA』というのはイタリアンマフィア、ロシアンマフィア、チャイニーズマフィア、アメリカンギャングらと同様、一目置かれるアウトロー集団である。

 

高倉健が演じる田岡が加入したとき、山口組はまだ数十名足らずしかいない小さな組だった。それを、いずれ世界にまでその名を轟かせる大集団に仕立て上げたのが、三代目田岡である。戦争映画は世界的にヒットし、やくざ映画は受け入れられない。人を殺す数は戦争の方が圧倒的に多いのに奇妙な話だが、『食人族』や『異常犯罪者』がいつまで経っても認められることがないように、ヤクザもそのきわどい境界線で生きる、ニッチな存在である。

 

美空ひばりエノケンといった、当時の日本人が知らない人はいない芸能人のすぐそばには、この田岡の存在があった。世界を揺るがす山口組はなぜ日本一巨大なヤクザになったのか。その根幹には何があるのか。カリスマ的な求心力を持った人間が本気を出せば、世が戦国時代なら歴史に名を残す名将となっていたかもしれない。