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『フルメタル・ジャケット』 レビュー(感想)と考察

フルメタル・ジャケット

ポスター画像出典:『映画.com

 

この映画の主人公は一人ではない。どう考えたって、前半と後半で雲行きが違う。いや、確かに全体的には戦争という歪んだ現実に対する風刺である。悪く言えば大げさなのだが、これは映画だ。そういうエンターテインメントが観客を大いに喜ばせる。その意味で、やはりスタンリー・キューブリックという人間は、鬼才である。1957年の『突撃』と並び「反戦映画」と称される事があるが、キューブリック監督自身には本作と『突撃』いずれにも「反戦映画」という意識はないという。

 

また、作中に流れるミッキーマウスマーチだが、これはこのベトナム戦争を継続し続けたニクソン大統領を、あのウォルトディズニーが支援していたということで、『ベトナム戦争はニクソンもウォルトディズニーも応援する活動だ』というメッセージに見えるが、この話を聞くとこの映画が反戦映画ではないということなので、そこにメッセージ性はないだろう。だが彼は常に、『生のカオスを描きたい』とか、『戦争そのものを描きたい』として、真実の描写にこだわりがあったようで、

 

ベトナム戦争=ニクソン=ウォルトディズニー=ミッキーマウスマーチ

 

という図式を考えた時、やはりこれはある種の風刺なのかもしれない。『ほほえみデブ』の狂気は映画史に残る伝説となった。またこの教官だが、当初、訓練教官役への演技指導のために、海兵隊の訓練教官を務めた経験のあるこの男が選ばれた。しかしその迫力が余りにも生々しく圧倒的だったため、自ら訓練教官を演じることになったという。