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『天と地と』 レビュー(感想)と考察

天と地と

ポスター画像出典:『Amazon.co.jp

 

切り取られた舞台としては日本の歴史の中でも極めて大きなイベントの一つだ。偉人や歴史のことをまとめて詳しく書いた参考書には、どの本にもこの戦いを数行のテキストで終わらせているが、戦国時代、天才的な軍略の才で越後国を統一し、甲斐国の武田信玄と名勝負を繰り広げた上杉謙信を描く。戦国時代というのは日本の歴史でも極めて大きな時代だ。622年に49歳で生涯を閉じた聖徳太子は、初めて『忍者』を使って情報を集め、政治を行った人物として知られているが、900年頃、この世界に『武士(侍)』という一種の思想を持った人間が登場した。

 

国司から荘園を守るために武装をはじめ、武装集団が結成される。そうして『自警団』的にこの世に登場した武装集団こそが武士だった。そして939年、平将門によってこの世界に大きく武士の名が轟く。そうして徐々に既存の大きな力に抗うように自然発生したエネルギーは、この国の根底に密かに根付いていった。

 

 

そうして1500年頃、蓄積されたエネルギーは爆発した。戦国時代である。その戦に勝ったのは織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という大本命のラインではあるが、それに匹敵する力として存在したのがこの上杉謙信と武田信玄の両者なのである。特に武田信玄の家臣団は異常に強く、『戦国最強』と言われた。もし13歳年上だった武田信玄という人物が信長と同い年で、彼が病に倒れることがなければ、彼は信長の最大の敵となっていたことは間違いないだろう。

 

だが、『軍神』と言われた上杉謙信も相当な実力者である。であるからして、両者が衝突した『川中島の戦い』はあまりにも注目度が高い。したがって、この映画にも俄然注目が集まるわけだ。

 

 

最初は、渡辺謙と松田優作というキャスティングだったようだが、病気などの都合でそれが叶わなかった。そしてこの二人に決まったのだが、それでもこの上杉役の榎木孝明という人物は、剣道に長けていて相当なやり手。津川雅彦の熟練の腕にも期待がかかるが、実際には残念な結果となった。いや、確かに演技に関しては申し分はない。だが、馬を使った合戦の様子がひどい。『キングダム』のCG問題もそうだが、このあたりが日本映画の限界というところである。

 

それだけの人物が衝突するのだから、馬を使っての彼らの戦闘シーンには、死闘が想像されるわけだ。だが実際に我々が目にするのは戦にも馬にも慣れないド素人のチャンバラごっこであり、そのクライマックスのシーン一つでこの作品の価値を著しく下げてしまっている。これが、『作中で読まれない手紙の中身まで書く』黒澤明の映画だったら、違う物になっていただろうか。

 

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