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『恋におちたシェイクスピア』 レビュー(感想)と考察

恋におちたシェイクスピア

ポスター画像出典:『Yahoo!映画

 

とにかくこのシェイクスピアという男が世界に与えた影響は大きい。芝居・演劇に関わる人は皆口々に彼の作品を称賛し、作品に携わろうものなら恍惚とした表情をしてみせ、悦に入る。だが、正直彼の表現を聞いて『美しい』と感じるのはそう多くはない。関係者たちは皆そう口をそろえるのだが、私はディカプリオの『ロミオとジュリエット』を観た時、何を言っているのか全然わからなかった。私はとても論理的で読解力がある方なのだが、それでもだめだ。

 

ということは、彼は『芸術家』であるという一つの可能性が見えてくる。ピカソはこう言い、

あるいはこう言っている。

 

私が得意とするのは『真理の論理的な解読』。宇宙や医学なんかの細部を理解するような最高難易度はまだ無理だろうが、大体の難しい話はわかる。そんな私がチンプンカンプンというのだから、そこにあるのは『理解の範疇を超えているもの』となる。それはつまり、芸術なのだ。

 

私は徹底して『現実逃避』を嫌い、曖昧なものを盲信することに恥を覚える現実主義者だが、芸術というものは、我々の人生にそうした『窮屈な現実以外の世界』を教えてくれる、パラレルワールドへの入り口なのかもしれない。作中にも登場するエリザベス女王が演劇を好んだのは、彼女のような立場の人間が強いられた『窮屈な現実』の世界の影響があったのかもしれない。

 

この話は、彼をスターダムに押し上げた『ロミオとジュリエット』の誕生秘話を切り取ったものである。現実は演劇のようにはいかない。だが、せめて演劇(芸術)の世界では、自分が美しいと感じる世界に生きたい。彼の芸術を観ていると、そういう心の叫びが聞こえてくるようである。