『7月4日に生まれて』
ポスター画像出典:『ヤフー映画』
ロン・コーヴィックの同名の自伝的小説を映画化。『プラトーン』で有名なオリバー・ストーンが監督を務める。主演のトム・クルーズは役作りのため、約1年間車椅子に乗って生活した。凄絶な真実を描くオリバー・ストーンが扱うトム・クルーズは新鮮でとても見応えがある。1989年の作品ということもあるが、28歳だった彼もあれから30年経って58歳(2020年)。もはや超一流になった彼がこうした役を演じるのを見ることはなさそうだ。あるとしたら人気が落ち始め、あるいは高齢になり、『できることに限りがある』としてお払い箱となってしまうその時、『斬新な角度』としてあり得るかもしれない。
実話だ。だから壮絶である。ベトナム戦争というだけではない。戦争がどれだけ悲惨なものなのかということを、『戦後の障碍者』という切り口で伝えている。だから戦争のシーンはほんのわずかだ。それならプラトーンで描かれている。戦争映画というのは戦場を描いてしまうとどの映画も同じようなものになってしまう。私は多くの映画を観たから分かるが、各戦争映画で抜きんでる作品は、どれも差別化を意識している。『戦闘機、戦車、スナイパー、海軍、空軍、陸軍、ドローン』など、様々な切り口に特化して描くことで差別化を図り、新鮮さを与えることに成功している。今回は戦後の障碍者だ。
だからとても重苦しいシリアスな内容である。それがこの映画が『ミッションインポッシブル』よりも有名ではない理由だろう。だが、いざ映画を観るとこういう映画にこそ人生の教訓があることを思い知るのだ。アメリカは第二次世界大戦に勝った。だからその息子世代はベトナム戦争という新しい戦争で、父親たちの影を追う。ここには、日清戦争、日露戦争に勝って自惚れた大日本帝国に近い自惚れや過信があっただろう。
ケネディやニクソンという国のリーダーの影響もあった。雰囲気全体がもう、『ベトナム戦争に行くべき』だった。だが、すべてが間違いだった。それに気づいたときにはもう、五体不満足の体だった。