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『フェンス』 レビュー(感想)と考察

フェンス

ポスター画像出典:『GYAO!

 

これはかなり玄人受けの映画だ。だから、日本ではアカデミー賞にノミネートされても劇場公開されなかったり、逆に受賞をきっかけに公開が実現した作品は過去に前例があるが、本作では受賞したにも関わらず劇場公開が見送られた稀な事態となったという。アメリカの批評家の評価もすこぶる高く、批評家支持率は93%、平均点は10点満点で7.8点となっている。

 

だが、確かに劇場公開されなかった理由もうなづける少し変わった映画である。『行動範囲』が狭いのだ。ほとんどが家の付近だけで終わっている。しかし、後で冷静に考えてみると、もしかしたらその事実もこの映画のメッセージの一つなのかもしれない。

 

『フェンス』というのは作中では普通のあのフェンスのことだと説明がある。あるというか、フェンスを作っているから、ついそうであるという風に感じる。だが、よくよく考えてタイトルと映画の内容を照らし合わせてみると、まさかそのフェンスのことではないと気が付くことになる。では一体どういう意味なのか。ここがこの映画の深いところであり、これを見抜いた時に感じる感慨を得られない人は、この映画の評価を低くすることになるだろう。

 

明言されている説明文をどこかで見ているわけではないので推定になるが、恐らくキーワードは、

 

  1. 黒人の可能性(人種問題)
  2. 死神対策(病気で死が近い)

 

このあたりになるはずだ。普通フェンスをすると、ここで出た死神対策のように、例えば動物などの害から身を守ることができる。泥棒もそうだ。メキシコでは家の窓に鉄格子があるのが普通だが、日本人はそれを理解できないだろう。フェンス(柵)は普通、ガードの役割を果たしてくれる。だが、今の鉄格子の話を聞いて、どこか心に閉塞感のようなものを覚えなかっただろうか。恐らく、それがもう一つのこの言葉の意味だ。

 

彼はフェンスを作っている。どうして作っているのか。自分はそのつもりだろう。だが、実際にそのフェンスは、自分の人生に何をもたらしたのだろうか。