ポスター画像出典:『Amazon』
1987年(昭和62年)に公開された日本映画、『ハチ公物語』のリメイク作品。私はオリジナルを観ていないので、この映画で大いに感動してしまった。私も犬を飼っていて、亡くなった後にその名前を会社名にして起業した。そしてそれ以来15年以上犬を飼っていない。それが私と犬との関係だ。安易には近づけない。それほど愛おしくて、守るべき、尊い存在なのだ。
かつて、本当にそういう犬がいた。そしてそれが渋谷駅のハチ公となって今も街のシンボルとしてこの世界で主人を待ち続けている。私も正確には知らなかった。きっと多くの人とて同じだろう。知らずして待ち合わせ場所にして、ハチ公のことより待ち合わせている恋人との時間のことしか考えない。ハチに思いを寄せる人は1割いるかいないかだ。
それを俯瞰・客観視点で1000倍速で見たい。とんでもない数の人が行き来し、あっという間に夜が来て、かと思ったら朝が来て。秋になり、葉が落ち、冬になり、雪が積もり、春になって温かい希望のエネルギーに満ち溢れ、そうして一年が過ぎ、二年が過ぎる。しかし、周りに一時的に集まる人たちは流行の波に流されながら服装や言葉遣い、持ち運ぶアイテムは変わるが、やることは同じだ。知らずして待ち合わせ場所にして、ハチ公のことより待ち合わせている恋人との時間のことしか考えない。ハチに思いを寄せる人は1割いるかいないかだ。
しかし、ハチ公はじっと動かない。銅像だからではない。彼は生前もそうして待ち続けていたのだ。その狂おしいほどの健気さが愛しくて、私は逆に、泣かなかった。泣いて感動して満足し、自己満足に陥るのは失礼だと判断した。私は敬意をもって彼の一生と向き合った。