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『レニー・ブルース』 レビュー(感想)と考察

レニー・ブルース

 

 

実在の毒舌漫談家レニー・ブルースの生涯をダスティンホフマンが演じる。実は、白黒であり70年代のこの映画に、何の魅力があるのか最初は分かっていなかった。『観るリスト』に登録しておいたが、あまり気が進まない。スタンドアップコメディアンの一生を観て何か面白いのかと、日本の私はまず第一印象としてそう感じてしまっていた。その後、ダスティンホフマンの映画をいくつも観る。

 

  • クレイマー、クレイマー
  • ビリー・バスゲート
  • トッツィー
  • レインマン
  • ネバーランド
  • 大統領の陰謀
  • アウトブレイク

 

すると、彼がなぜ有名なのかを思い知ることになる。彼は名優に相応しい実力者だ。この映画は、『レインマン』に並んで彼の名作二大巨頭に並べられる価値のある、見応えのある映画である。この爽快さを日本で例えて言うなら『古畑任三郎』だ。田村正和が今もう一度あの古畑任三郎を演じようと思ってもできないだろう。それは現在におけるダスティンホフマンとて同じだ。脂の乗ったこの時期の彼だからこそできた、魂の一作と言えるだろう。ちなみにあのマシンガンのように喋り倒すウーマンラッシュアワーの村本も、このレニー・ブルースに大きく影響されている。

 

彼は黒人差別や性に関する話題といったギリギリの問題を軽快なトークによって見事に笑いに変えていく。『Mr.ビーン』ことローワン・アトキンソンは言った。

 

そこにも書いたように、宗教、殺人、差別、麻薬、隠蔽、そもそも、この世にこういう笑えない理不尽な出来事があること自体が、間違っている。信念あるコメディアンは、ただその憂うべく状況を、笑いに変えて中和する、粋な役を買って出ているだけなのだ。